トップページ研究内容メンバー研究業績photo九州大学薬学部ホームページ創薬腫瘍科学アドレス

研究内容

 2007 年5月に新設された創薬腫瘍科学講座はベンチからベッドサイドへの“トランスレーショナルリサーチ”において、特に“ベンチ”における弾力的ながん創薬科 学を発展させる目的で研究を行っている。がんの創薬開発の現場において、創薬研究を確実に発展させるためにはがん患者における悪性進展と病態に関わる標的 分子をがん細胞とがんの間質の両面から把握する必然性がありそのための研究を本講座で実践していく。

 


1.がん血管新生とリンパ管新生と炎症

 近 年、がんの悪性進展に炎症が深く関与していることが注目され始めている。我々はがんの悪性進展と炎症を結ぶ重要な生物反応として血管新生やリンパ管新生の 誘導に注目して研究を進めてきた。代表的な炎症性サイトカインIL-1βは強い血管新生誘導活性を示すことをマウス角膜法で観察し、この経路にはシクロオ キシゲナーゼ2(COX2)やプロスタノイドの関与があることをCOX2阻害剤等を用いて明らかにした。このことより、炎症反応を誘導するIL-1シグナ ルは、がんの治療を考案する上で重要な分子標的であることを提示した。またマクロファージが、炎症反応としての血管新生やがん誘導の血管新生に重要である ことを明らかにしている。さらに腫瘍関連マクロファージを標的としたリポソーム包埋ビスフォスフォネートを作製した。この薬剤の投与はIL-1β誘導の血 管新生のみならず、がんの増大やがん血管新生を著明に阻害し、骨転移も抑制することを動物モデル系で証明している。下記に述べる膵癌における血管新生やマ クロファージの浸潤の低下はNDRG1/Cap43による炎症性サイトカインやケモカインの産生抑制が関与していることを観察している。現在は肺癌のリン パ節転移における炎症性シグナルの関与を検討中である。

2.分子標的薬剤を含む抗がん剤の最適化医療

Iressa (gefitinib) や Erlotinib (Tarceva) などの EGF受容体キナーゼを標的にした分子標的薬剤の感受性を決定するメカニズム
  非小細胞肺癌の治療で注目されているEGF受容体キナーゼ標的薬剤(EGFR-TKI)であるgefitinibやerlotinibの感受性はEGFR 遺伝子の活性化突然変異の有無に依存している。しかしながらほとんどの症例で投与後の薬剤耐性の獲得が問題になっている。我々はヒト肺癌由来細胞株を用い てgefitinibやerlotinibの耐性獲得の新規の機序についての検討を行っており、獲得耐性に関与するシグナル伝達分子や経路を明らかにしつ つある。


3.抗がん剤開発に有用と考える新しい分子標的の探索

がん転移抑制遺伝子N-myc Downstream Regulated Gene-1(NDRG 1/Cap43)
  我々は転移抑制遺伝子として知られるNDRG1/Cap43を独立に2001年に単離した。NDRG1/Cap43の発現はヒト膵癌において転写因子であ るNF-κBの活性抑制を誘導することにより、浸潤能を変化させ膵癌患者の癌転移/血管新生を制御することを明らかにした。現在はNDRG1ノックアウト マウスを用いて、宿主の癌悪性進展への効果を検討している。